「遠い日々」(村に居た頃こんな話を聞いたことがあった)******************あの頃女の子が居た。おさげ髪の子。かすりの着物ともんぺ着て。雨の中。傘がなくてずぶ濡れになってた。思い出の中の姿。兄が一人あったという。遠い記憶の中の姿。山の向こうで生まれ育って。女の子は。空という言葉で上を言った。村の言葉らしかった。「もう少し空へおけばいいの?」「ポケットの空のボタンがとれて」「家の裏の山の空に畑があって・・・」僕は笑った。女の子は恥ずかしそうな顔をした。空は上に有るから空は上だった。太陽も雲も風も月も星も空に有って上に有るから。空でも上でもかまわなくなって。僕は次第に女の子の言葉がおかしくなくなった。すっかりなれた頃戦争が始まって。女の子の兄は出征した。戦地で死んだ。「兄さんは空に行きました」空...詩
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